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昭和天皇 (岩波新書)

昭和天皇 (岩波新書)

142頁、「太平洋戦争後の天皇は、宮中祭祀を継続しながら、祭祀権を事実上皇太后に奪われる格好になっていた。皇太后の念頭には神功皇后があったように見えるが、伝統ではなく歴史的に見れば、この時期の皇太后は、むしろ琉球王国における聞得大君と比較されるべきであろう。琉球には、行政権をつかさどる国王のほかに、祭祀権をつかさどり、国王の姉妹や王妃、王母が任命される聞得大君という女性がいたからである」。

208頁、「七十四年一月三日の元始祭を代拝にしたいという入江の申し出を、天皇はしぶしぶ認めた。このとき、天皇が最も心配したのは、高松宮の動きであった。「生物学研究は天皇のお仕事の中心ではなく、副次的な、あるいは逃避的な趣味として高松宮は考えておられた」から、祭祀を休んで生物学研究を続けることを「非難」する人物と天皇が見なしていたのは高松宮だったと思われる」。