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死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う

22頁、「廃止か存置かはともかくとして、百という数字を巡るこの確定と執行のシーソーゲームに対しては、やっぱり何かが停まっていると思いたくなる」。

154−155頁、「一般的な死刑執行のプロセスは、死刑判決が確定して検察庁が死刑囚に関する上申書を作成する瞬間から始まる。法務省刑事局に回された上申書は担当検事のチェックを受けてから「死刑執行起案書」となり、刑事局や矯正局などの決裁を受けてから再び刑事局に戻されて、今度は「死刑執行命令書」となって法務大臣官房に送られる。ここで秘書課長や官房長、法務事務次官の決裁を受けてから、命令書は法務大臣の机の上に置かれることになる。これに法務大臣が署名をすれば、執行へのカウントダウンが開始される。署名された命令書は当該死刑囚が収容されている拘置所に直ちに送付される。処刑は署名から五日以内だ。もしも大臣が署名をしなければ、執行命令書は引き下げられ、時機を見てまた再提出される」。

164頁、「死刑制度のひとつの主体とでも言うべき検察庁。死刑を求め、執行には指揮者として立会うことを義務付けられる検事たち。ところがその彼らが、実のところは死刑を直視していない。視線は確かに向けられている。でもきっと焦点は合っていない。微妙にずれている。そのずれた隙間に慣例を詰める。詰めないことには自分が壊れてしまう」。