189頁、「これに関連して内海は、統合失調症発症に伴うナルチシズムへの対抗と症状化の問題を、新たな視点から取り上げて論じている。それによれば、患者の症状とは「医療に出会ったとき、はじめて析出する」ものであり、「(患者は)制度ないし社会の中に参入して、事後的に病的体験の意味を発見する」のだという。つまり、患者は「一人で苦悩している段階、すなわち一者の世界から」「制度性すなわち三者関係の世界と出会うこと」により「症例がはじめて析出する」のであり、治療とはまず「この三者関係から二者関係への治療的退行」を要すものだとされる」。

228頁、「この「途方に暮れ、断念する」距離感というのは独特である。それはおそらく、相手の情緒的反応に巻き込まれながらも、やがてそのプロセスの中で行き止まり、わずかに生じた諦念から互いを見出すというスタンスから始まるのではないだろうか」。