15頁、「それなりの眼力を持っているコーチならば、選手を見て、どこが悪いかを気づくことは変わらないはずだ(中略)だが、選手だってそんなことはビデオを見ればわかる。それでも直らないから困っているわけだ。選手がほんとうに欲しているのは、「どうすれば欠点が矯正されるのか」という具体的なアドバイスである。だから、指導者は「おれが現役のころは、こうやって修正した」とか「こういうタイプのピッチャーには、こうして対応した」と経験をもとに語ってやることがまず大切だ」。

38頁、「よくいうことだが、人間は自己愛でできている。だから、自分に対する評価はどうしても甘くなる。適正なものではない。言い換えれば、他人が下す評価こそが、その人間の真の価値であり、評価なのだ」。

61−62頁、「無形の力をあげていけばきりがないが、あえてまとめるとすれば、「分析」「観察」「洞察」「判断」「記憶」ということになろうか。データはそのうちの「分析」の根幹をなすものである。あくまでも「スタート地点」。ここを間違ってはいけない。これを補うのが「観察」だといっていい。観察とは、いわば目に見えるものから情報を引き出す力である(中略)こうしたさまざまなことから有益な情報を引き出せるかどうかでかなり結果は違ってくる。目に見えるものから情報をひきだすのが観察なら、「洞察」は目に見えないものを読む力である。その最たるものが心理を見抜く力だろう。人間の行動はそのときの心理状態に大きく左右される」。

130頁、「江夏や池山のケースが示しているように、「考え方を変える」ためには本人が「気づく」ことができるかにかかっている。したがって、指導者は「気づかせてやること」が大切になる。再生の極意があるとすれば、それはいかに「気づかせるか」ということに尽きるのではないかと私は思っている(中略)では、そのために必要なことは何か。第一は、その選手をよく「観察する」ことだ。