犯罪被害者支援とは何か―附属池田小事件の遺族と支援者による共同発信

犯罪被害者支援とは何か―附属池田小事件の遺族と支援者による共同発信

45頁、「最も危惧すべきはマスコミの取材攻勢である。現場では数多くの低空飛行によるヘリの騒音により無線情報が正確に伝わらず、また早い時期の電話取材で電話回線がパンク状態となり、必要な情報も伝わりにくかったのは現実で、今後の教訓とすべきである」。

55頁、「「危機に直面している人々は、支援を受け入れやすい状態にあるといっても、支援者の一方的な都合でサポートの内容が決められたり、介入のタイミングがはかられたりすることがあってはなりません。あくまでも被害者の実情に合わせて、被害者のペースで受けとめることができるように支援を考えなければなりません。支援の主体はあくまでも被害者本人にあるのです」。

65頁、「しかし、危機後の混乱期においては、被害者は「何が問題なのかもわからない」状態にあります。また、何かしてもらいたいことを人に伝えるだけのエネルギーも、もはやなくなっているかもしれません。酒井さんも、いろいろな人から「困ったことがあったら何でも言ってね」「何でもするから」と言葉をかけられました。「ありがたさを感じつつも、これらの言葉が重荷になることもあった」とふり返っています。「この時は、「『何でもしますよ』という言葉より、『私は・・・ができます。どうされますか?』といった現実的で具体的なアドバイスが貴重なものとなる」。

128頁、「「紹介には責任がつきまといます」。酒井さんはよくこう表現します。「紹介した人にコンタクトするかどうかは、あくまでも被害者の選択に委ねられる」という原則をしっかり心にとどめておくことが大切だと思います」。

199頁、「私たちは暗黙のうちに、犯罪被害者のなかに、犯罪に巻き込まれる原因となった「落ち度」を探そうとしてしまいます。そして、被害者との間に無意識の「上下関係」を構築してしまうのです。人々は、加害者側だけではなく、被害者側にも犯罪を招くような原因を探し求めてしまいます。それは、被害者側に何か原因を見つけ出し、「自分はそんな原因を作らないから大丈夫、犯罪に巻き込まれる心配はないのだ」と考え、安心感を得ようとするためです」。

210頁、「亡くなってしまったから終わりではなく、彼女が生きていたということが大切なのだと思います」。