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獄中からの手紙

獄中からの手紙

第5章「内ゲバ克服のために」が特に面白かった。あと、脳腫瘍で苦しむ永田洋子に対して「君を診察した医師の病院に行って確認してきました。何でもないといってます。何でもないんですよ。取調べは十分にできるんです」と突き放したのが前検事総長松尾邦弘氏だったエピソードとか。

197頁、「総括は、何よりもそうした偏見におちいりやすい主観的な意識、特に常識とされてしまっている理想や理論を可能な限り排除し、誰の目にも明白となっている事実を冷静に、かつ具体的に分析し、さまざまな事実の間に貫かれている真相を解明することから始めなくてはならない。常識にとらわれない自由な自立した意志によって真相を解明すること、これが総括の第一歩である」。

217−218頁、「しかし、同時に、私たちの同志殺害は、「秘密の共犯関係」のもちこみ、「一蓮托生の関係」の創出による集団の組織的結束の維持が個々人の個性の解体、「個人原理」の排除、無私性に依拠した党派性の育成と不可分のものであることをきわめて明瞭な形で明らかにすることにもなった。(中略)だが、このことはあまりにも当然のことであろう。何故なら、同意することのできない決定や行為に対してはっきりと異議を唱え、きっぱりと拒否することができるためには、何よりも「個人原理」が確立され、自立した自由な個性が個々人の中になくてはならないからである」。