コーチャンフォーで買った。第7章の「統合失調症の治療と回復」がすごくわかりやすかった。

統合失調症

統合失調症

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61頁、「エスキロールは、家族や周囲の人間との葛藤が、患者の困難を生み出す原因となっており、患者を家族から切り離して、安らげる家族的な環境を提供することが、回復を促すと考えたのである」。

193頁、「統合失調症は、先進国では、貧しい階層で有病率が高い。地域間の格差も大きく、経済的に恵まれていない人々が多く住む地域では有病率が高いことが知られている。(中略)騒々しく落ち着かない住環境を始め、栄養や子ども時代の養育、失業や将来への不安、対人関係でのストレスなど、貧しい階層は強いストレスに曝されやすい」。

200頁、「ブロイラーは回復のために、社会で適切な仕事を持つことの重要性を強調した。「規則正しい仕事は正常な思考を維持する」のに役立つが、叱責や過度の負担といったストレスは仕事に対する喜びを失わせるとして、ほどよい不安に調整することが大事だとした」。

208頁、「年金や生活保護によって、経済的な不安はとりあえず和らぐが、精神的な生き甲斐や自分の存在価値ということを肝g萎えると、それで問題が解決するわけではない。これまで見てきたように、その人にふさわしい仕事をすることは、単に賃金を得る以上の多面的な効用を生み、気持ちの安定と再発の予防に大きく寄与する」。

224頁、「患者さんが薬をのみ続けるのは、病気に対する病識が生まれ、同じ失敗をしたくないと思うようになるからであるが、それだけではない。治療スタッフや家族との約束を守り、その信頼に応えたいとの思いからでもある。そう思うのは、自分が治療スタッフや家族によって認めてもらえていると思うからだ」。

225頁、「うまく軌道に乗っているときには、できるだけその流れを邪魔せずに、本人の主体性を大切にし、そっと手を添えるだけでよいが、これは危険と思ったときには、断固とした姿勢で警報サインを鳴らさなければならない。「今が大事なときだよ」「再発するかどうかの瀬戸際だから、しっかり薬を飲んで」と、初心を思い出さなければならない」。

227頁、「家族のだれかが本人に対して批判的であったり、敵意を抱いていたりすると、再発するリスクが何倍にも上がってしまう。また、本人の状態に対して、感情的に過剰反応しやすい家族でも、悪化の危険が高まる。逆に言えば、本人の状態を受け入れ、何か問題があってもそれに対して過敏になりすぎずに、心を寛くもって接することができると、予後がよくなる」。

249頁、「病識を持たせることは大切だが、妄想でしかココロのバランスが取れなくなっている人にあなたが病気だと言っても逆効果なのである。その人の人間としての尊厳を大切にすることが、治療を受け入れることにもつながるのである」。

254頁、「いずれにしろ、妄想という症状を取り去ることに躍起になるよりも、生活や気持ちの面での支えを強化し、病状と上手に付き合っていくことのほうが大切で、十分な安心や現実的な喜びをもてるようになると、妄想は自然に力を失っていく」。

255頁、「これまで見てきたことからもおわかりのように、統合失調症の人の安定化のためには、何もすることがない状態よりも、決まった日課や仕事に取り組んだほうが、改善や安定のためにも寄与することが大きい。病状が悪化して不安定なときは別として、本人の状態に合わせて決まった日課に取り組むように心がけるとよい。統合失調症の人は、新しいことに慣れるのに時日を要する一方で、日々の習慣として一旦確立されると、それをきちんと続けていこうとする。家事をすることも有用だし、デイケアや作業所に通って訓練を行うのも役立つ」。

257頁、「ほどよいひきこもりは、神経の過剰な興奮を防ぎ、安定化に寄与する。友だちを作ることは良い面もあるが、それによって対人関係の負担が増えすぎることは、悪化要因となる」。