上司に借りた本。

185−186頁、「こんな厳粛で素晴らしい成人式をするのは、少年院だけです。ですからアタシは、何をおいてもこちらに駆けつけて参ります。どのようなところで式を迎えようと、これからでございます。長い人生、これからでございますから、ここで学んだことを、どうか活かして行っていただきたいと思います。どうか、人に必要とされる、人に望まれる、人の役に立つ人になってください。本日は、おめでとうございました!」。

197−198頁、「怒るなんてことはね、経験や教養がなくたってできるんです。その証拠に、幼稚園児だって怒りますからね。要は、怒るってのは、自分に不都合を生じさせた相手に対し、怒りをぶつけてるだけ。自分の思い通りになんないから、イライラして熱くなってるだけなんだ。普段は相手への愛はあるかもしれないけど、その瞬間はないんです。ところが、叱るってのは違う。こっちは、「過ちを正してやること」。愛がないとできないやね。一時の感情で頭に血がのぼり、カッカしているような状態では、できないことなんですな。じゃあ、きちんと叱るためにはどうしたらいいか。まずは深呼吸することでしょうなぁ。怒りが溜まってちゃ、ちゃんと叱ることもできない。」

215頁、「誤解があっちゃいけないので、最後に断っておきますが、何も私は少年院の子どもたちが罪を犯したのは、すべて周りの大人の責任だと言ってるわけでも、大目にみてやってくれと言ってるわけでもないんですよ。実際、特別少年院でもある久里浜少年院の少年たちは、ほとんどが再犯で舞い戻ってきた連中です。もっといえば、刑務所の世話になっている受刑者たちの四分の一は少年院経験者であるという現実もあります。アタシの言いたいのは、それをふまえた上で、じゃあ、我々、大人は何ができるのかを、少し考えてみたっていいんじゃないかってこと。目の前にいる自分の子どもたちはもちろん、親戚や近所の子どもたちに、何を教えていけばいいのか。本当に正しいかどうかなんて、まったく分かりませんが、アタシがこの目でみて、この耳で聞いてきたことが、少しでも少年院のアイツらのお役にたてればいいかな、なんて、格好つけた言い方にはなりますが、そう思ってるわけです」。